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鹿島、地震エネルギーで揺れを止める新世代制震装置「HiDAX-R(Revolution)」を開発

世界初、地震エネルギーで揺れを止める新世代制震装置
「HiDAX-R【Revolution】」を開発
~世界最高の制震効率を達成した革新技術「VERS」を搭載~
  鹿島(社長:押味至一)は、建物用制震ダンパーとして、世界初となる振動エネルギー回生システムVERS(Vibration  Energy  Recovery  System)を搭載した新世代制震オイルダンパー「HiDAX-R(Revolution)」を開発しました。本ダンパーは、自動車のブレーキ制御などで用いられているエネルギー回生システムの原理を初めて建物に応用したもので、地震による建物の振動エネルギーを一時的に補助タンクに蓄え、それをダンパーの制震効率を高めるアシスト力として利用することにより、従来型装置の限界を大幅に超えた世界最高の制震効率を達成しました。風揺れから震度7の大地震までカバーするのはもちろんのこと、頻度の高い震度4~5クラスの地震や長周期地震動に特に高い効果を発揮し、一般的な制震構造と比較して揺れ幅を半減、揺れが収まるまでの時間を劇的に短縮することが可能です。
  「HiDAX-R(Revolution)」は、現在施工中の(仮称)新日比谷プロジェクトをはじめとして、大型超高層ビル計3件への適用が決定しており、高い耐震安全性能とともに居住性や事業継続性を重視した安心性能が求められる超高層ビルを中心に、今後積極的に適用を拡大していく予定です。

  
<開発の背景>
  鹿島は業界に先駆けて1985年から制震構造の研究開発を開始し、1989年には世界初の制震ビルを完成させています。その後、1995年に日本初の本格的な建物用オイルダンパーHiDAMを開発、2000年にはオイルダンパーに組み込んだ制御弁を独自の制御則で開閉制御することにより、制震効率(振動エネルギー吸収効率)を約2倍に向上させたHiDAXを開発しました。HiDAXは現在までの15年間で30棟を超える超高層ビルに適用され、その優れた効果は振動実験や地震・強風観測により実証され、高性能オイルダンパーの代名詞として高い評価を頂いてきました。

  2011年の東日本大震災において首都圏の超高層ビルが長時間揺れ続けたことを契機に、建物の耐震安全性確保のみならず居住者の不安感軽減も重要課題であることが広く認識されています。すなわち、大地震時の大きな揺れだけでなく、後揺れ・風揺れといった繊細なレベルの揺れまで大きく低減できる、高性能な制震装置が求められています。また、既存超高層ビルの長周期地震動対策など、既存ビルの制震補強では、ダンパーを設置できる場所が制限される場合が多く、少ない台数で効果を発揮する高効率な制震装置が求められています。

  こうした建物安全性能と安心性能に対する高度なニーズに応える技術として、この度、世界初となる「振動エネルギー回生システムVERS(Vibration  Energy  Recovery  System)」を搭載した、新世代制震システムHiDAX-R(Revolution)を開発しました。その制震効率(振動エネルギー吸収効率)は、これまで「最高効率」を標榜してきた従来型HiDAXと比較して約2倍(一般のオイルダンパーの約4倍)に達します。

  
<構成と特徴>
  HiDAX-R(Revolution)は、従来型HiDAXに、補助タンクと電磁制御弁で構成された振動エネルギー回生システムVERSを追加装備した構成となっており、装置に付属したコントローラが、内蔵センサの情報に基づいて制御弁を開閉制御します。
  従来型HiDAXは、ブレースに蓄えられた建物の振動エネルギーを一気に熱に変換して吸収しますが、VERSは建物の振動エネルギーを一旦補助タンクに蓄え、このエネルギーをダンパー抵抗力のアシスト力として利用します。地震エネルギーを制御エネルギーに変換するこの革新技術により、従来型HiDAXの限界を超えた性能UPを実現しました。

  
  本装置の特長をまとめると以下の通りです。

1.従来型HiDAXの約2倍(一般のオイルダンパーの約4倍)に達する振動エネルギー吸収効率を実現します。風揺れから震度7の大地震までカバーすることはもちろんのこと、頻度の高い震度4~5クラスの地震や長周期地震動に特に高い効果を発揮し、揺れ幅を半減、体感時間を大幅に低減し、建物の耐震安全性のみならず、安心性能を大幅に向上させます。

2.ダンパー1台当りの電力は約70W程度と軽微であり、簡単な無停電電源装置により大地震時の動作も容易に保証することができます。なお、万一の停電や電気系統の異常時には自動的に従来型HiDAXに切り替わるフェイルセーフ機能を内蔵しています。また、ダンパー監視機能も併せ持つコントローラはダンパー本体と離れた位置に設置可能なため、遠隔・簡便な場所で点検が可能となります。
<性能確認>
  実大装置を用いた実験により、HiDAX-Rの高い性能が実証されています。
  次の図は、同じ試験条件に対する装置の荷重変形関係を示したものであり、ループの面積が振動エネルギーの吸収量を表します。一般のオイルダンパー(HiDAM)に対するHiDAXの効率は約2倍ですが、HiDAX-Rの効率は約4倍に達することが実際に確認されました。

  

  HiDAX-Rの制震効果を確認するために地震応答解析を実施しました。下図は、35階建て建物モデルに東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の際に、東京で観測された地震動を210秒間入力したものです。7階~30階には鋼材ダンパー(座屈拘束ブレース)を設置し、低層部の1階~6階のみにHiDAX-Rを設置しました。HiDAX-Rを設置すると、揺れ幅は1/2、後揺れ時間は1/9程度と劇的に短縮されます。ちなみに、従来型HiDAXを設置した場合に比べても、揺れ幅は3/4、後揺れは1/2と大幅に低減されます。

  
<今後の展開>
  「HiDAX-R(Revolution)」は、三井不動産が建設中の(仮称)新日比谷プロジェクト(東京都千代田区)を第1号に、日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業C街区(東京都中央区)、日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業A地区(東京都中央区)でも採用が決定しています。
  大地震時の大きな揺れから、後揺れ、風揺れのような微細な揺れまで、最高効率の振動エネルギー吸収能力を発揮するHiDAX-Rは、当社の制震システムのラインナップの中で最上位機種として位置づけており、高い耐震安全性と共に居住性や事業継続性を重視した安心性能が求められる建物に対し、積極的な適用の展開を図っていく予定です。
  また、既に旧型のオイルダンパーが設置されているビルでも、HiDAX-Rにバージョンアップできるような検討も予定しています。
<適用プロジェクト概要>

  

鹿島建設(株)

http://www.kajima.co.jp/

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