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鹿島、ドリルジャンボ削孔データによるトンネル切羽前方の地山評価手法を開発

ドリルジャンボ削孔データによるトンネル切羽前方の地山評価手法の開発
南久保山トンネル(宮崎県延岡市)に適用しその精度を確認
  鹿島(社長:中村満義)は、多くの山岳トンネル現場で活用されている「削孔検層システム」により得られた地質評価を、一般的または客観的な評価基準と関連付けることによって、支保部材の選択(支保パターン選定)にまで活用できる新たな地山評価手法を開発しました。本手法は鹿島がこれまでのトンネル工事で蓄積した数多くの実績に基づくデータと、掘削初期段階に実施する探査に基づき確立したものです。
  今回この評価手法を、宮崎県延岡市で施工を完了した南久保山トンネル新設工事における、到達側坑口部での地山評価に実適用し、その精度を確認しました。

  
<開発の背景>
  山岳トンネル工事において、安全に工事を進め安定した品質を確保するためには、地山に応じた適切な支保パターンを選定することが必要不可欠です。一般的に山岳トンネルでは、事前に行われる地表からの弾性波探査(地中に伝わる弾性波の速度・距離を解析して地層の状況を知る方法)によって得られる“弾性波速度分布”に基づき支保パターンの設計を行うとともに、施工時には目視を主体とした切羽観察データを加え、支保パターンを選定しています。特に、地質の変化が激しく地質不良部が点在するようなトンネルにおいては、支保の過大な変状や崩落を防止するために、施工中に切羽前方の地質を把握することがきわめて重要です。
  これまで鹿島では、施工中の前方地山を評価する技術を各種開発しています。その一つである「削孔検層システム」は、岩盤の削孔に要したドリルジャンボの仕事量に相当する『破壊エネルギー係数』を用いて地山評価を行いますが、地山等級を評価する基準である『弾性波速度』や、切羽観察の項目の一つである『圧縮強度(岩盤の堅さを示す評価基準)』との関連性が明確ではなかったため、支保パターンを選定するまでの一般的評価としては活用できないことが課題でした。
<本手法の概要>
  鹿島は、削孔検層システムで得られた『破壊エネルギー係数』と、『弾性波速度』・『圧縮強度』との相関を明確にすることによって、切羽観察結果に、客観的な地山等級予測を結び付け、支保パターン選定にまで活用できる地山評価手法を確立しました。
  本手法の概要は以下のとおりです。

  ・「削孔検層システム」と、直接的に弾性波速度分布を把握できる「トンネル速度検層」を掘削の初期段階に並行して実施・分析することで、『破壊エネルギー係数』と『弾性波速度』の相関関係を細かく把握し、地山等級予測へ活用します。
  ・「削孔検層システム」適用開始後20年間蓄積したデータを元に、『破壊エネルギー係数』と『圧縮強度』の相関関係を把握し、客観的な評価へ活用します。
  ・鹿島が先に開発した「タブレットPCを用いた風化変質判定システム」を併用し、支保パターン選定のために重要となる切羽観察項目のうち、『風化変質』についても客観的に評価します。
  ・以上のステップを踏まえ、適切な支保パターンの選定をタイムリーに行います。

  *参考資料は添付の関連資料「参考資料2」を参照
<現場での適用>
  本手法を南久保山トンネル新設工事(宮崎県延岡市)に適用しました。まず、南久保山トンネルの低土被り区間とトンネル中央部において、本手法により破壊エネルギー係数と弾性波速度の相関関係を求める試験施工を実施しました。これにより得られたデータを基に、到達側坑口部での補助工法(注入式鋼管先受け工)の要否や適用範囲を評価しながら掘削を行った結果、本手法により予測した地山状況と適用した補助工法が精度よく合致していたことが実証され、実際の現場に十分に適用できる評価手法であることを確認しました。また、「風化変質判定システム」も併用し、さらに客観的な情報として切羽評価及び支保選定に活用することができました。

  *参考画像は添付の関連資料を参照
<今後の展開>
  今回開発した手法は、工事や工期、工費に負担が少ない「削孔検層システム」を利用して、前方地山の弾性波速度と圧縮強度まで精度よく予測し、支保パターンの選定にまで活用できる手法です。
  鹿島では、山岳トンネル工事に本手法を積極的に適用し、更なる工事の安全性及び品質向上を実現していく方針です。
<工事概要>
  工事名:宮崎218号  南久保山トンネル新設工事
  工事場所:宮崎県延岡市北方町南久保山山地先
  発注者:国土交通省九州地方整備局延岡河川国道事務所
  施工者:鹿島建設株式会社
  工期:2013年2月~2014年9月
  工事諸元:トンネル延長381m、掘削工法NATM

鹿島建設(株)

http://www.kajima.co.jp/

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