最盛期を迎えた東京大学安田講堂改修工事
~伝統の技を確認し、最新技術で全面改修~
国立大学法人東京大学<総長 濱田純一>と清水建設株式会社<社長 宮本洋一>が進めている東京大学安田講堂(文京区本郷7-3-1)の改修工事では、現在、構造躯体と講堂天井の耐震改修ならびに、外壁をはじめとする仕上げ材を建設当初の意匠に復元する諸工事を講堂内の各所で展開しており、工事の最盛期を迎えています。
安田講堂は、東京帝国大学建築学科で教鞭を執られた内田祥三、岸田日出刀の両氏の設計、合資会社清水組(清水建設の前身)の施工により、1925年に完成した同大学のシンボリックな建築物です。東大紛争の後、長期間、閉鎖されていましたが、90年の大規模な改修工事(他社施工)を経て翌年から再び使用されるようになり、96年に国の登録有形文化財の第1号に指定・登録されました。
安田講堂の構造・規模は、鉄筋コンクリート造、地下1階、地上5階、延床面積6,988m2で、講堂部分の屋根を支える骨組は鉄骨造になっています。今回の全面改修は、東日本大震災により各種建物に発生した被害の状況を踏まえて計画されたもので、構造躯体と非構造部材である講堂天井の耐震化を主軸に、外壁・サッシ等の長寿命化と建設当初の意匠への復元、講堂の自然採光の復活、バリアフリー化等を行います。改修設計の担当は東京大学キャンパス計画室(教授 千葉 学)・同施設部と香山壽夫建築研究所で、工期は2013年6月から2014年12月までの19カ月です。
着工後、清水建設はまず、既存施設内を3Dスキャナで実測・図面化するとともに、東京大学と清水建設が保存している工事記録写真等の資料から、過去の改修工事等を経て建設当初の意匠が失われてしまった建物部位を特定。また、建設当初の意匠や施工方法を検証することで、仕上げ材の裏側に隠された「技」を確認しました。清水建設はこうした調査結果を踏まえ、耐震性の確保と建設当初の意匠復元を目指した具体的な改修工法を立案。さらに、試験施工により改修工法の有効性を検証のうえ、実際の工事に着手しました。
今回の改修工事の最大のポイントは講堂天井の耐震化です。700m2ある既存天井は、屋根を支える骨組(小屋組)から鋼製材で吊り下げられた、いわゆる「吊り天井」で、しかも漆喰塗仕上げ(ラスモルタル下地)の天井板は単位重量が約100kg/m2もあるうえ、経年劣化が激しく脆弱化していました。そこで、大地震による落下防止を図るために、地震時に天井だけが独立して揺れないように建物と天井を一体化し、天井材の軽量化を図る、ということを基本方針に据え、改修工法を立案しました。
具体的には、脆弱な既存天井板の撤去、小屋組と鋼製材を連結・一体化する補強、軽量(15kg/m2)で剛性が高いグラスファイバー補強された石膏天井板への張り替えです。天井板の意匠は、撤去した従来の天井の意匠を継承しています。この改修工法により、震度7クラスの大地震時でも天井が落下しないことを当社技術研究所で実施した振動実験により確認しています。
以上
≪参 考≫
※東京大学安田講堂改修工事の概要
発 注 者 : 国立大学法人 東京大学
設 計 者 : 東京大学キャンパス計画室(教授 千葉 学)・同施設部
香山壽夫建築研究所
改修概要 :
●構造躯体の耐震化
鉄筋コンクリート造耐震壁214枚、鉄骨ブレース24カ所の施工
●講堂天井の耐震化
既存天井の撤去、グラスファイバー補強石膏板による代替
●建設当初の意匠の保存・補修
外壁・サッシ及び、講堂天井の意匠の復元
●居住環境の向上と省エネ
二重サッシの新設、断熱材の施工
●バリアフリー整備
エレベータ、多目的トイレの新設
●内装改修
講堂の遮音性能の向上と自然光採光の復元 東京大学
http://www.u-tokyo.ac.jp/
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