府警本部棟第2期工事 公共事業のライフサイクル全般にわたる情報を一元的に管理し、情報を共有化 することで効率的な業務を実現し、業務品質の向上を支援する建設CALSシ ステム。 IT化時代では、建設工事においても情報化施工が進展している。 こうした中、大阪府では、平成20年度から建設CALSの導入を目指して現 在、システム開発が行われ、既に都市整備部では一定規模以上の工事で電子納 品を実施、また、建築工事では、府警本部2期棟工事で建設CALSの取り組 みが進められいる。 竹中・間・安藤・錢高・松村・ベクテルJV 大阪府の公共工事で、建設CALSの推進現場となるのが「大阪府警察本部棟 新築第2期工事」(大阪市中央区大手前3―1―16)。
施工を担当する竹中・間・安藤・錢高・松村・ベクテルJVでは、大阪府の建築工事では新しい試みとして取 り組みを進めている。
同作業所が取り組みを決めた背景には、平成14年4月に大阪府が策定した「大阪府建設CALS/ECアク ションプラン」の流れの中で、モデル的に実施するとしたもの。 その狙いは、工事関係情報の共有及び活用による業務の効率化、完成図書の電子納品の2点。
〜〜〜 全情報の電子化と一元化を目標 場内ネットワーク構築で効果 〜〜〜 CALS導入の前提としては、JV事務所エリアと作業所エリアにLANのネットワークを構築。CALS推 進にあたって竹中JVの岡田因善総括所長は、「全ての情報の電子化と情報の一元管理、関係者の全員参加」 を挙げる。
情報の共有化では、ネットワーク構築にあたりJVスタッフ用のパソコン110台と2台の所内サーバー、1 台の外部サーバーを利用。 グループウェアの「デスクネッツ」を導入し、スケジュールや掲示板の機能により日常の打ち合わせや工程調 整、各自のスケジュール管理とともに、他のスタッフのスケジュールも確認でき、効率的な連絡・調整が可能 となり、特に「検査時間の予約や調整に大きな効果があった」(岡田総括所長)。
電子納品の対象は、図面から工程表、各種書類や写真などで、工事中から所内サーバーで図面は審査前と審査 後のものに分け、工事記録写真は定点写真などをアルバム化し、ペーパー類はPDF化を図って日々管理。ま た、外部サーバーを活用して協力会との連絡も緊密となった。
これらCALSの効果は事務処理上だけにとどまらず、安全面にも効果が得られた。安全施工サイクル管理シ ステムを導入し、打合せにおける作業スケジュールや予定を明確にするとともに、作業内容等入力用のパソコ ンを事務所エリア(四台)と作業所エリア(3台)に設置することで、作業所への入場者や人員配置、危険箇 所などの情報を全職長がいつでも取り出せることとなった。
また朝礼場では、パソコンからデータを巨大スクリーンに投影し、当日の作業予定や伝達事項などを全作業員 へ見やすく、かつリアルタイムで伝えることが可能となった。このほか、協力会用のホームページも作成して おり、新規入場者教育はじめ施工体制台帳、安全環境品質協議会の議事録閲覧等に供している。
さらに、同作業所が大規模でありCALSの推進現場であることから見学者の数も多く、作業所独自で現場案 内用のワイヤレスガイドシステムを構築。エリア毎にPDFにあらかじめ保存した音声ガイドを流すもので、 誰でも容易に均一な現場説明が行われる。
このほか、同現場は、警察庁舎という点から情報漏洩防止対策としてネットワークのセキュリティには万全の 措置が取られ、ホームページの外部閲覧でも最小限の情報にとどめた。また入場に際しては、外部からの不審 者侵入防止のため、バーコード付の入場者カードの携行が義務付けられている。
一方で、建設CALS構築にあたっては、発注者と設計者らで構成するCALS推進委員会を設け、実施に際 しては施工情報管理センター(CIC)とCALS推進施工者協議会、各JVらで構成するCALS担当者会 が運用にあっている。IT化について岡田総括所長は、会議等でのペーパレス化や書類作成の簡素化などを挙 げ、「伝えやすく理解しやすい」とメリットを挙げた。
大阪府警察本部棟第2期工事は、府警本部1期棟の東側に、SRC一部S造地下3階地上10階建て塔屋2 階、建築面積約6、200平方?、延床面積約6万2、000平方?の規模で建設。 設計は大阪府建築都市部公共建築室、黒川紀章建築都市設計事務所が担当。 工事は平成15年4月から行われており、進捗率は96%で、これまで約120万時間に及ぶ無事故・無災害 記録を継続中。竣工は今年12月10日を予定している。