産・学・官連携で新技術開発を促進 行政ニーズと研究シーズ、上流段階でのマッチング目指す 近畿地方整備局は、産・学・官連携による新技術開発を促進させるためこの ほど、「新技術開発評価会議」を設立した。座長には京都大学の足立紀尚名誉 教授が就任。 7月23日に開かれた第1回評価会議では、近畿整備局が新技術開発を求める 行政のニーズとして、技術開発を推進すべき重点技術テーマの素案を提示し た。 今後のスケジュールは、この素案を案としてまとめた上、各大学との意見交換 を行いながら当面の技術開発を求める連携計画案と研究会設立案をまとめ、来 年2月に予定している第2回評価会議で審議。 3月に当面の連携テーマを決定し、これに基づいた研究会を設立する。4月か らは各研究会を始動させ、官の行政ニーズと学の研究シーズのマッチングを目 指す。
こうした近畿整備局の産・学・官連携による取り組みは、全国の地方整備局でも初めての試み。
新技術開発評価会議の設立は、各研究機関が保有する研究シーズと近畿整備局の技術ニーズの融合を図り、公 共事業に積極的かつ円滑に活用していくため、開発促進技術の評価、フィールド提供による現地試験の事前審 査などの事項を処理するのが目的。 必要に応じて研究シーズ保有者へのヒアリングを実施することができるとしている。
同会議が設立された23日、冒頭、あいさつに立った近畿整備局の深澤淳志企画部長は「これまでは、すでに 民間で開発された技術を評価してきた。 これをもう少し上流の段階で、私たちがどんな技術を求めているのか行政側のニーズと、大学や研究機関にど のようなシーズのデータがあるのかをそれぞれ意見交換し、ニーズとシーズがうまくマッチングすれば新しい 技術が生まれるのではないか、というのが会議の趣旨。大学との連携でマッチングすれば、その技術を徹底的 に開発し、実際に使って工事に役立てていきたい」と語った。
会議を終えた後、足立座長も「この会議は、中流から始まっていた産学官連携が上流からも国と民とがいっし ょになってそれぞれの案(ニーズ、シーズ)を出し、その課題を克服して技術開発を進めていこうというもの で、大学としてもありがたいシステムだ。 国から技術要請があれば、研究テーマとして大学でも公開し、研究組織をつくりたい。そこでニーズとシーズ のリスカッションをし、お互いの了解のもとによりよい技術を生み出していければ…」と歓迎した。近畿整備 局が示した素案に対しては、「もうすこし補強しなければならない部分もある。 また、テーマによっては研究者一人でも可能な技術開発もあり、研究体制はいろんな形態があってもいい」と の考えを示した。 〜〜〜 「安心・安全」「環境」など5つの目標を具体化し、真の国民ニーズに応える 〜〜〜 近畿整備局は、近畿の目指すべき将来の姿を実現するための「近畿の社会資本プロジェクト」を策定し、推進 している。 これらのプロジェクト実現のために利用者の視点に立ち、国民の暮らしと関わりを意識した「近畿地方の暮ら しに関わる五つの目標」を掲げ、これらを具体化するため、技術開発を進めるべき重点課題(テーマ)を抽出 している。 今回の産・学・官連携は、従来の「モノ・仕組み」に対して新しい技術の考え方を取り入れた価値観の創出 と、新技術開発・活用の促進を図り、真の国民ニーズに応えられる技術開発を進めていこうというものだ。 近畿地方の暮らしに関わる五つの目標は、国土交通省全体の技術開発の方向性を示し国民の暮らしとの関わり を意識した技術研究目標「技術が支える明日の暮らし(国土交通省技術基本計画)」を基本として選定。 具体的には、 ?「安全・安心」(大規模な地震、広域的な災害や集中豪雨・豪雪などに備え安全で安心できる暮らしの実 現) ?「環境」(身近な自然を保全・再生し、豊かな都市環境を形成) ?「暮らし」(多文化が共生した、にぎわいのある近畿の創出) ?「国際競争力」(国際競争力を高め活力のある近畿の実現) ?「参加」(近畿地方の合意形成と誰もが理解できる事業の評価)を挙げている。 産・学・官連携による新技術開発テーマは、5つの目標の実現に向け、近畿整備局管内の開発ニーズをもと に、施策の重点、開発の効果、緊急性などを総合的に勘案し、開発主体の明確化、優先性を評価した上、安全 で豊かな暮らしを実現させる新技術開発について「学・官」の連携を基軸に推進する。 なお、技術開発を求める行政のニーズは、近畿整備局が把握できる既存技術と照らし合わせて整理したもの で、民間技術の発展に伴い実現が可能となるものなどのテーマについては適宜見直すとしている 産・学・官連携による新技術開発の促進について(案)は、広く公開し新技術開発テーマによる研究参加を求 める。 応募対象は大学、高等専門学校、これに付属研究機関に属する研究者及び研究グループを対象とする。新技術 開発テーマに沿った研究会などの認定については、学識者・業団体・行政からなる第三者機関(近畿地方整備 局新技術開発評価会議)を設立し、これにあたる。 また、設立された研究会の成果の公表については年度ごとに発表する。研究会設立に係る応募手続きなどの詳 細(実施要領など)については、別途定めるとしている。