ミラクル構法でまちを再生 住みながら増改築工事が可能な「ミラクル構法」で業績を伸ばす(株)ミラクルスリ ーコーポレーション(大阪本社=大阪府吹田市、以下MTC)。戸建住宅、店舗やテ ナントビル、病院、学校へと、ミラクル構法の適用範囲は着々と広がり、梁スパンが 34mと、同構法では最長となる増築工事が現在、大阪府箕面市内で進捗している。 次々と新しいビジネスモデルを創出する同社の取り組みを紹介する。 団地や駅前再開発へ広がる可能性
梁34mの工事は「ライフアパレル本社増床計画」。事務所兼倉庫として稼動中の3階建てビルを五階建てに 増築するもので「施工、鉄骨工事は中高層集合住宅向け第1号を担当していただいた業務提携会社が担当し ています。実績があり、信頼しています」と話すのは同社の岸本逸男社長。特許工法であるミラクル構法の 業務提携会社は129社に上るという(6月11日現在)。 「ユーザーの方の生の声もお聞きしながら、業務提 携会社と受注活動を進めています」と話し、「土地を購入して新築するなど、様々な手法を検討した上でミ ラクル構法が採用されるのはありがたいですし、その結果、ユーザーの方が利益を上げられたと聞くのは本 当にうれしい」と微笑む。 ミラクル構法の可能性は、との問いには「構造計算が成立すれば超高層でも可 能。そういうところまで手がけたいという夢は持っています」とし、首都圏で活発に行われている再開発を 例に挙げ、「完成まで2、30年要する大規模再開発も、計画当初からこの構法を提案していたなら、事業期間 を短縮できたかもしれない」との思いを持っている。 新築よりコストが削減でき、増改築工事中の仮移転が不要という同構法最大のメリットには、テナントを有 する商業施設からも熱い視線を集め「営業補償の問題もあり、テナント移転を伴う改築に難色を示す事業主 が多い。郊外型の大型商業施設に客を取られ、再生活性化を図りたいと願う駅前型商業施設の案件も数件進 行中です。この構法を採用した駅前再開発ということになりますね」と、MTCが見据える再生は建物のみ に留まらない。 今年3月に完成した「長浜ミラクルステアーズ」。国土交通省の既存共同住宅の再生に関する提案募集で、 ハード・計画に跨る総合的な提案として昨年5月に選定された「ミラクル構法による既存共同住宅再生の提 案」をもとに実施した、MTCが取り組む団地再生モデルの先駆けと位置づけられており、今後も団地再生 には力を注ぎたい考えだ。 MTCは、建築研究開発コンソーシアム(会長=山内泰之・独立行政法人建築研究所理事長)が2005年度か ら二カ年実施した「既存共同住宅団地の再生に関する総合検討調査」の検討委員会(委員長=巽和夫・京都 大学名誉教授)の一員として活動、再生手法の方向性などをまとめ、今年4月に成果概要を国土交通省へ提 出した。同調査は引き続き、2007年度から2か年を研究期間とし、団地再生の新たなビジネスモデル構築、 様々な団地再生手法の実用化・円滑化への課題整理などを研究成果とするべく、その2がまもなく始動す る。 「人口が密集する都市部には増築、減少する地方部には減築など、検討その一の中でも提案しているミラク ル構法を採用した団地再生を、安全・安心のまちづくりを掲げておられる行政庁に、働きかけていきたい」 と、建物、ひいてはまちの再生に意欲を燃やす同社の動きに、今後も注目したい。