国道交通省近畿地方整備局 道路と鉄道を併設 沈埋海底トンネルのライン形成に弾み 大阪港の未来に夢を架ける?太い絆?のライン形成に弾みがついている。大阪 港の諸機能を有機的に結ぶことを目的として国土交通省近畿地方整備局が建設 を進めている夢洲トンネルがそれで、このほど大阪港夢洲トンネル咲洲側アプ ローチ部(S4工区)が完成した。大阪港の主航路を横断し、夢洲と咲洲を結 ぶ道路と鉄道併設の海底トンネルの全長は約2.1?。陸上部は開削工法、海底 部は沈埋トンネル工法で施工しており、平成20年度の完成を目指している。 近畿圏のみならず、我が国を代表する5大港として東京、横浜、名古屋と肩を 並べ、島国・日本の交流、交易の中心として多大な役割を果たしている大阪港 と神戸港。平成16年7月には「阪神港」としてスーパー中枢港湾に指定され、 これまで以上に連携を深めながら国際競争力を高め、コスト・サービス水準の 向上を図っていく。 このうち、波静かな大阪湾の中心に位置し、良好な気象・海象条件を誇る大阪 港は、大阪都市圏の経済活動や市民生活を支え続けており、今後も物流の合理 化・高度化に応える国際交易施設の拡充ならびに国際化・情報化社会に対応す る?臨海新都心?の形成を目指していく。
《連携・機能強化の促進に寄与する開削区間》 活力と魅力ある国際都市として大阪が発展するため、臨海部に高次の都市機能を集積している大阪港。「テク ノポート大阪計画」に基づきながら、咲洲、舞洲ならびに現在埋立造成中の夢洲の各エリアを中心として国際 交易、国際交流、情報通信、先端技術開発の拠点整備や文化レクリエーション、居住機能の整備を進めてお り、交通アクセスについてもさらなる連携・機能強化を図っていく。 それへの動脈として大きな期待を集める「夢洲トンネル」は、咲洲と夢洲を結ぶ幹線臨港道路として計画され たもので、延長は約2.1?。鉄道と道路を併設した海底トンネルと陸上トンネルを海底部は沈埋トンネル工 法、陸上部は開削工法でそれぞれ施工している。大幅な時間・距離短縮効果による港湾物流コストの削減な ど、大阪港の国際競争力強化などに重要な役割を果たす「夢洲トンネル」のうち、沈埋トンネルの延長は806 m。咲洲側の1号函から夢洲側の8号函までの全8函を接続して整備する。 一方、陸上トンネルとなるアプ ローチ部の延長は、咲洲側、夢洲側ともに666m。トンネルは、道路・鉄道分離方式から一体方式のものまで 多層構造で、沈埋部との接続については、咲洲側は直接接合、夢洲側は立坑との接続となる。 ●現場第一主義の徹底で高品質確保 平成20年度の完成を目指す「夢洲トンネル」の建設は、海底部ならびに両アプローチ部において順調に進めら れているが、咲洲側アプローチ部においては、沈埋函が取り付く直接接合部(S1工区)から「なにわの海の 時空館」前より西の大阪市施工境界(咲洲運河手前)となるS9工区までの区間を全9工区に分割して工事を 推進。このうち、大阪港夢洲トンネル咲洲側アプローチ部(S4工区)躯体等築造工事が完成し、ライン形成 に弾みがついた。 《大成・鉄建・本間特定建設工事共同企業体》 12.7万時間全工期無災害も達成 同工事は、基礎工、本体工、土留め工および計測管理工を行うもので、大成・鉄建・本間特定建設工事共同企 業体が施工。「現場第一主義の徹底」を図りながら確かな技術力を駆使し、全工期無事故・無災害での高品質 施工を達成した。 この工事における工程上のポイントとなったのは、せん断補強の施工。発生から11年を迎えた阪神・淡路大震 災の教訓を踏まえ、近年においては、各種設計指針が改訂され、構造物の耐震性能を高めるために、従来の直 角フックに代わって両端に鋭角または半円形フックを持つせん断補強鉄筋を使用することが標準となった。 しかし、過密配筋の上にこのようなせん断補強鉄筋を配置するのには、主筋と配力筋、さらにはせん断補強鉄 筋を複雑な順序で組み立てる必要があるため、施工能率が低下するばかりでなく、機械式継手を必要とする場 合もあることから、コストダウンが重要な課題となっている。 こうした背景の下、確実な定着で、施工性と耐震性の向上を同時に実現する工法として開発され、幅広く採用 されるようになったのが「ヘッドバー」。同工事においても、躯体のせん断補強筋に「ヘッドバー」を採用し たことにより、定着の確実性と地震に対する粘り強い構造を実現。また、配筋作業の単純化も図れたので、施 工性ならびに品質が大きく向上し、コストの軽減にもつながった。 このほかにも、大成・鉄建・本間特定建設工事共同企業体では、施工性と品質の向上を目指すための創意工夫 を凝らし、全工期無事故・無災害で高精度施工を達成した。 なお、今後は、海底沈埋部の工事も本格化していき、大阪港の未来に夢を架け、連携・機能強化をもたらして いく?太い絆?のライン形成は最盛期を迎えることとなる。
【写真上:夢洲トンネルは道路・鉄道併設の沈埋海底トンネル、咲洲側アプローチ部。写真下:鉄道部のトン ネル内部】