健全な建設業界の発展へ 藤本貴也・近畿地方整備局長に聞く ▼大阪の活力
――そうですね。話は変わりますが、大阪も超高層のマンション建設が増 え、少しずつ活気が蘇ってきたと感じています。大阪の活力という面ではどう ですか。
【藤本局長】 2008年には中之島新線が開通し、大阪大学跡地に建設されて いる朝日放送の本社オフィスと放送スタジオも完成します。また、建築家・安 藤忠雄さんの「桜の会・平成の通り抜け」の植樹運動も広がっており、それに 合わせて都市空間の整備も進むでしょう。中之島にとって2008年は一つの大き なエポックメーキングな年になりそうです。その1年前の2007年には、なんば パークス2期が完成しますし、さらに2011年に梅田北ヤード開発を中心とした 梅田界隈の整備、阪急百貨店のオープンなど、2007年から2011年にかけては、 ホップ・ステップ・ジャンプとミナミからキタへ大きく飛躍するものと期待し ています。
▼御堂筋の再生 ――その中間に位置する御堂筋の再生も大きな課題です。
【藤本局長】 御堂筋の再生には、地元の皆さんのご協力が大前提になります。例えば違法駐輪をみた場 合、その半分近くは通勤する店員さんや来店する人の放置自転車で占められているのが現状です。このため、 いま必要なのは沿道の商店の皆さんの協力と空いている駐車場の有効な活用だと思います。地域の人と行政と の連携の良い事例が大阪の宗右衛門町にあります。地元の人が警察といっしょになって見回りを行い、条例も 出来て問題の解決に大きく前進しました。こうした事例があるわけですから、地元の運動がもっと盛り上がっ ていけば、御堂筋の放置自転車一掃も出来ないはずがないと思っています。 ――御堂筋の暗いイメージも指摘されていますね。
【藤本局長】 御堂筋の明かりは20ルクスしかありません。銀座やフランスのシャンゼリゼ通りは60ルク ス、アメリカのブロードウェーは80〜90ルクスで、これらに比べて非常に暗いのが実情です。御堂筋の銀杏並 木が光を遮っているという指摘もあり、大阪の悪いひったくりのイメージも重って、もっと明るくできないも のか、様々な意見が出されています。特に夜の御堂筋は演色性(色の再現性)が悪く、沿道や女性も美しく見 えません。こうした背景から関西経済界や近畿地方整備局らも、昨年11月7日から12月31日まで、「光とにぎ わいのある夜間景観社会実験」(御堂筋、光のシンフォニー)を実施しました。 御堂筋の歩道照明について光環境の問題点を改善し、今後の資料にしていこうという試みです。実は銀座通り でも、かつて社会実験を行ったことがありました。都電が廃止された昭和40年代初めのころです。都電の下に 敷かれていた大理石を有効に利用するために、日本橋商店街の人たちが結束して加工費を負担し歩道に敷きま した。これを機に建設省(現国土交通省)も照明をもっと明るくしようと女性職員にモデルになってもらいま した。こうした例も参考に、御堂筋も地元の人たちといっしょに勉強会を重ね、ひとつひとつ社会実験を積み 重ねていくと、御堂筋の魅力もぐんとアップするものと思います。(水谷次郎)
【写真:上段は御堂筋の光のシンフォニー、下段は飛躍が期待される中之島界隈】